水墨画は無を描く。文芸春秋12月号の、柳澤桂子と玄侑宗久の悟り、空に関する対談が興味深い。1)悟りに至るストレス、リズム、セントロンの役割、2)素粒子物理学が見る全体統合の世界、3)瞑想時の脳内の血流、3)神に関する記憶の遺伝。特に3)、ユージン・ダキリによれば、瞑想時、自分が何処に向いているかを認識する脳の部位(上頭頂葉後部)への血流が止まるという。玄侑は、あらゆる現象が、主体と関係性で生じる出来事とされた、と述べている。科学は分析するものではなく、物事を紐付け、ハイパーリンクさせていく方向に向かっている。グーグルが本気で目指すのもそこか。
白川静は梅原猛との対談集「呪の思想、平凡社」で、「存在」という字をその成立から見ると、神聖化された土地と人という意味になる、と述べている。柳澤の、神は脳に存在する、遺伝する、という言葉を踏まえると、無の存在は、全体となり、悟りとなる。無は、社会という横軸、時間という縦軸で囲われる共有記憶であり、墨は、記憶を呼び起こすトランスゲートである。
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