イノベーションと水墨画、華麗なる一族最終回

華麗なる一族について演出家の鴨下信一氏が、面白い分析をしている。1973年が日本社会のある種の転換点であり、中産階級の大量消費時代の元年だろう、と。前回華麗なる一族が放送された1973年は、その前2-3年と全く違う世の中だったという。そして、今大量消費時代が終わりつつあるらしい。華麗なる一族は、時代の終焉に出現するドラマらしい。確かに、日々色々な人、特に年配の人と話していると、「先達に学ぶ」という気持ちを忘れずに持ちつつも、「ちょっとした違和感」を感じることがある。

先日ある年配の経営者と話をしていた。その方は、最近自分の視聴率のヒット基準を20%から17%に下げたが、それでもヒットといえる番組が無いという。何か違和感を感じた。第一に、僕の友達はみんな録画をして「花より男子」などドラマを見ていると言っていた。だから、結構ドラマの話題は共通に盛り上がってるのだ。家に帰って、ドラマの時間を待つなんてことはしないだけだ。この話を披露したところ、そうじゃない、番組の質なんだと、その経営者は言った。その場はふーんということになった。第二に、過去のヒット作との連続で視聴率を分析している点だ。親子、違う世代が一緒になってテレビを楽しむことなんて、ハナからないことが若い人には普通だ。30%、40%視聴率を基準に、イマを眺めても作り手の悲観論が浮かぶだけだろう。

これもトある月曜日、ある会議に出席したら、事業計画のヨコに、家計可処分所得の推移が記載されていた。可処分所得が増えれば、自社売上も伸びる、消費者の財布の○%を獲ろうという説明だ。政府統計と自社事業計画を結びつけるのは、「春風が吹くと桶屋が儲かる」くらい実感が薄い。マクロ指標を暗記しただけで、何を生み出せるのか。週刊新潮連載の「窓際OLの日記」に、「”仕事デキず、ヤル気あるヤツ”が上司になると、書類だけ増える」という話が載っていて笑えた。これも、トある会議で、マネージャーがハケンのAさんに、インターネットのぺージをプリントアウトしてファイルに保存して貰います、と発言した。古今東西、新たな仕事が生み出せないマネージャーは、現状の仕事を細分化して保管・整理する仕事に邁進する。仕事自体のパイは増えない。マクロ、過去データの把握は、必要条件だが、十分条件ではない。

シュンペーターは、イノベーションを非連続な革新と定義した。もっと実際的に言うと、イノベーションは行動である。偶々読んだ新聞で、アドバンスト・メディア社長の鈴木氏が、イノベーションを定義して、「今までなくてもよかったものがなくては困るものに変ったときにおきるモノ」と言っていた。(2007年2月17日朝日新聞Beインタビュー) 変革点を過ぎてしまった今、過去データの延長線上が未来予測ではない。岩井克人氏が述べるところの、差異性の連続こそが新たな生きる術である。1973年から続いた大量消費の終焉。歴史から学ぶことはあるけれど、短期的な先達の知恵は、役立たない時代になっている。

水墨画は描かないことで気持ちを伝える技法を、日々鍛えるアートだ。筆数もなるべく減らす。よく美術館の企画展に行くと、大きな画面に細かな作業で完成させるアート作品を見かける。こうした細かな作業作品は、デキナい上司が今ある仕事をただ細分化してるのを、思い浮かばせる。確かに、細分化する社会という現実を映しているかもしれない。しかし、差異化という点では弱すぎる。中産階級のアート、ポップカルチャーが生み出したデザイン、カラフルな商業芸術。見る人は誰もがキャンベルスープを思い浮かべる。しかし、時代の変革点にいる自分たちに必要なのは、差異性のあるアートだろう。一筆一筆違う作品、見る人により感じる色が違う、など水墨画も差異性を基に作品を生み出していけば、少しはイノベーションを起こせる。

にほんブログ村 ベンチャーブログ ベンチャー社長へ

「イノベーションと水墨画、華麗なる一族最終回」への7件のフィードバック

  1. 山崎 豊子 さんは 華麗なる一族で・・ 華麗なる一族 最終回 山崎 豊子に期待!

    平均視聴率23%と大人気だったドラマ「華麗なる一族」(山崎豊子原作)の最終回が今日、放送されます・・昨夜の「スマステ」では、キムタクも出演して、山崎豊子原作「華麗なる一族」特集をしていました・・   山崎豊子さんの経歴・山崎豊子さんの取材にかける熱意・情……

  2. 華麗なる一族 視聴率

    華麗なる一族の視聴率が好調だ。だがドラマも終盤にさしかかりいまからでは「もう乗り遅れでは?」と思うかたもあらすじさえわかれば十分ついてゆけます。華麗なる一族第4話のあらすじ万俵鉄平(木村拓哉)の会社、阪神特殊製鋼が開発した新素材を、アメリカンベアリング社が、高く評価し、全米自動車業界へ大々的に展開させたいと申し出てきた。それは世界最大の鉄鋼国アメリカへ進出するという、日本鉄鋼業界の悲願を実現するということであった。同じ頃、金融再編を急ぐ大蔵省では、連日のように都市銀行同士の合……

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。