水墨画技法の基本を「葡萄」を描いて学びます。
実
STEP
準備
- 筆はまっすぐ立てて持つ(直筆)
- 墨の量・筆の毛先のコントロールが重要
- 実の大きさによって、筆先から約3mm程度までの部分を使う
STEP
1筆目(右側)
- 筆先を紙に軽く接触させる
- 接触した瞬間から、右斜め下に筆を動かす
- 動かしながら筆圧を少し強める
- → 筆の「腹」の部分が紙に触れ、実の丸みが出る
- 強めた状態で、そのまま筆をスッと離す → 毛の腹から抜くイメージ
- 筆の先端はとがった線で終わる
ポイント
・2筆は交差させないことで、自然なハイライト(光の反射)を演出
・丸み・立体感は筆の腹でつくる
・2筆目は描きすぎないこと!補助線程度の意識でOK
・筆圧のコントロールで、自然なグラデーションやにじみを活かす
房
1セット = 5枚の葉
1回の墨で5枚すべてを描く(途中で墨をつけ直さない)
葉は 互いに少しずつ重ねるように配置
STEP
実を連続して描く
- 墨を筆に一度だけ含ませる
- 墨が無くなるまで、実を続けて描く
- → 自然と「濃い→薄い」のグラデーションができる
- 一番最初に描いた実が、前面に見える
- 実同士は、少しずつ重なるように配置するのがコツ
- 房の端の実は、1筆のみで描く(空間に溶け込むように)
STEP
構成と光の意図
- 濃い実をどこに配置するかを意識する → その部分が「手前・光を受けた場所」として強調される
- 房の中心を濃く、端を薄くすると自然に立体的になる
- すべて同じ濃さで描かないこと! → 墨の表情が房に命を吹き込む
STEP
枝を描く(線描)
- 枝は房の中心を通る1本の軸がある
- 軸から、横方向へそれぞれの実に枝をつなげる
- すべての枝を描かないのがコツ(紅葉や桜の枝と同じ) → 実と実の**“気配”でつながっている**ような省略美を目指す
STEP
点を描く(実の中心)
- 各実に小さな点を描いて、向きを表現
- 点の位置・角度で、実の「傾き」「回転」を示せる:
- 中心:真正面
- やや上側:実が下向き
- 端に寄せる:実が斜めに傾いている
ポイント
・筆圧のコントロールが重要
→ 墨が徐々に薄くなるが、それが味になる(にじみ・濃淡)
・最初に描いた葉の墨が濃く、最後はやや薄くなるのが理想
・最後まで筆を離さず、すべて描き終える
墨を付け直すと一体感が失われるので注意
葉
STEP
準備
- 墨はやや水を多めに含ませた薄墨
- 筆は紙に対して寝かせ気味に持つ(梅の幹と同じ)
- 最初から形を作ろうとせず、動き・質感を重視
STEP
葉の形を描く
- 筆を寝かせ、葉の中心から放射状に下へ筆を動かす
- 放射の動きで、自然に葉の広がりが生まれる
- 最後の筆の四角い面(長方形)を紙につけるように使い、葉の縁のギザギザ感を表現
- 墨のかすれやムラはそのままでOK(自然な表情になる)
STEP
葉脈を描く(線描)
- 葉の中心点を決め、まず中心線(主脈)を描く
- 次に、主脈から左右に放射状に副脈を描く
- 筆は線の方向に対して常に90度(直交)をキープ
- 90度を保つために、紙を回すこともOK(無理に筆を曲げない)
STEP
描き終わりの処理
- 葉脈の線はトメ点を作らず、払って終える
- 線が葉の外側に出てもOK!→ 動きや自然さを出す一部として活かす
枝・つる
STEP
筆の構え方
- 墨を入れた筆を使う(通常の濃さ)
- 筆を45度に傾けて持つ
- 筆軸は**描き手と逆側(上向き)**に構える
- このとき、筆毛の全体が紙に均等に接地する角度を意識
STEP
枝を描く
- 筆を紙に接地させたまま、横にまっすぐ引く
- 筆軸は、**進行方向に対して常に90度(垂直)**を保つ
- 筆の先端側(手前)の濃い墨が枝の下側に出て、
筆腹側の薄い墨が枝の上側に出る - これにより、光が上から当たった自然な陰影表現ができる
STEP
つるを描く(線描)
- 細筆または筆先のみで、しなやかな細い線を描く
- つるは枝や実につながるように、自由に曲線で描く
- 巻きついたつるは、**筆を左右にゆらすように(平行に)**動かして描く→ クルクルとした巻き表現になる
STEP
自然さを意識して仕上げる
- すべてを描かないのが水墨画の美しさ
- 蔓や枝の線は、必要最小限にとどめる
- 墨の濃淡・かすれもそのまま活かして、動き・風を感じる表現を目指す